医療レーザーの仕組み第三弾になります!
今回は熱破壊式と蓄熱式の違いと、合う人・合わない人について解説していきます。
どうぞよろしくお願い致します!
前回のおさらい
前回の記事では、脱毛レーザーの種類は3種類あり、波長と吸光度についてお話をさせて頂きました。
① ダイオレーザー 800~940nm 熱破壊式・
② アレキサンドラライトレーザー 755nm 熱破壊式
③ ヤグレーザー 1064nm 熱破壊式
波長が短いほどメラニンの吸光度は高くなり、波長が長くなるほどメラニンの吸光度は低くなります。
アレキサンドライトレーザーが波長が一番短く、ヤグレーザーが波長が一番長くなり、ダイオレーザーは中間の波長になります。
なので、アレキサンドライトレーザーは、日焼けや色黒の肌には照射できませんが、太い毛など黒い毛には効果を発揮しやすいです。
逆に、ヤグレーザーは深達度が深く、根深い毛に効果を発揮し、色黒の肌や産毛にも効果を発揮します。
◆前回の記事はこちら↓
蓄熱式と熱破壊式の違いって何?
レーザーの当て方には、熱破壊式と蓄熱式の2種類があります。
熱破壊式脱毛と蓄熱式脱毛との大きな違いは、アプローチする場所と照射方法です。
照射方法の違いについては、下記の動画を見て頂くとわかりやすいです。
蓄熱式脱毛 | 熱破壊式脱毛 | |
---|---|---|
アプローチする場所 | 根の浅い位置にあるバルジ領域にアプローチ | 毛根の奥にある毛母細胞や毛乳頭にアプローチ |
照射方法 | 弱いパワーで連続して照射 | 強いパワーで単発で照射 |
レーザーの種類 | ダイオレーザー | ヤグレーザー・アレキサンドライトレーザー・ダイオレーザー |
痛み | 弱い | 比較的痛い(特にヤグレーザーは痛い!) |
わたしはリゼでラシャという脱毛機器を使っています。
全身脱毛は蓄熱式でVIO脱毛は熱破壊式の照射ですが、ほとんど痛みを感じません。全身は、じんわり暖かく気持ちよいくらいです。
VIOは、チクリとした痛みだけです。
対し夫は、メンズリゼでヤグレーザーなのですが、悶絶レベルで痛いそうです…。
深い部位まで強いレーザーを照射しているためなんですが、濃くて根深い毛にはヤグがとても効果的です!
夫は脱毛3回目が終了したのですが、びっくりするくらいヒゲが生えなくなりました!
蓄熱式が効果がないと巷で言われている理由は?
蓄熱式が効果がないと言われている理由は2つあります。
- 蓄熱式の歴史が浅いから
- 蓄熱式のターゲットはバルジ領域だから効果がない
早速この2つについて解説していきます!
蓄熱式の歴史が浅いから効果がない
蓄熱式が効果がないと言われている理由は、まだ歴史が浅いからだと言われていますが…。
実は、熱破壊式もそんなに古い歴史はなく、1983年、ハーバード大学皮膚科ウェルマン皮膚研究所の ロックス・アンダソンン 熱破壊式の理論を発表し、脱毛機が開発されました。
熱破壊式のアレキサンドラライトレーザーが開発されたのは1996年のことで、なんとまだ27年しか経っていません。
2000年~2001年に育毛技術からバルジ領域が発見されました。
蓄熱式は、バルジ領域や毛包幹細胞の活動を停止させることで脱毛できると考えられた理論です。
脱毛機器が開発されたのが2006年になります。
2006年に開発された蓄熱式脱毛レーザーは,メラニンとヘモグロビンの吸光度に差がある波長を用いて,皮膚表面を接触冷却し,低フルエンスで高速反復照射し,ハンドピースを動かしながら 1 ユニットに一定量のエネルギーを入れる方法である.
引用元:日本美容外科学会会報 Vol.44.特別号101p
従来の高フルエンスによる単発照射で毛包を熱損傷させるに十分なエネルギーを与える機器(以下,単発式)と異なり,低フルエンス,複数発の照射によって毛包全体に蓄熱していく.
蓄熱式の脱毛機器が出来てから18年です。
熱破壊式と蓄熱式の歴史の差は、10年ほどです。
実はそこまで、熱破壊式と歴史の差はないんですね。
蓄熱式のターゲットはバルジ領域だから効果がない
年代 | 脱毛のターゲット |
---|---|
1990 年代 | 毛母細胞 |
1998年~ | 毛包とその周囲組織 |
2001年~ | バルジと毛母細胞 |
蓄熱式が新理論(拡大選択的光熱融解理論)のバルジ領域をターゲットにしているという解釈がネット上で出回っています。
しかし、蓄熱式は蓄熱式脱毛機も従来のレーザーと同様にメラニンに反応しており、直接バルジ領域をターゲットとするわけではないです。
蓄熱式脱毛機の「ソプラノアイスプラチナム」の製品情報には、「バルジ・毛球・毛乳頭」の3つをターゲットとすると明記されています。
バルジ領域だけがターゲットという訳ではありません。
Soprano ICE Platinum offers the synergistic benefits of the 3 most effective wavelengths for hair removal, each targeting different structures within the hair follicle. The 3 main anatomical targets include the Bulge, Bulb and Papilla.
(日本語訳)ソプラノアイスプラチナムは、脱毛に最も効果的な3つの波長の相乗効果を提供します。 脱毛に最も効果的な3つの波長が、それぞれ毛包内の異なる構造をターゲットとして、相乗効果を発揮します。3つの主な解剖学的ターゲットは、バルジ、毛球(毛母細胞)、毛乳頭です。
引用:Alma Lasers社 (蓄熱式脱毛機「ソプラノチタニウム」の製品情報)
また、蓄熱式の効果も日本美容外科学会会報 Vol.44.特別号でしっかりと検証されています。
下記がその論文になりますが長文のため非表示にさせて頂いています。
ただ、研究対象に男性が入ってないので、男性のヒゲやVIOに有効なのかは少し疑問です。
従来の脱毛機器は疼痛緩和のために接触型冷却装置を備えていても色黒の肌や,日焼けした
引用元:日本美容外科学会会報 Vol.44.特別号
皮膚を脱毛する場合には注意が必要であった6).Li ら7)は,プロスペクティブ,二重盲検,無作
為比較試験を行いスキンタイプⅢ~Ⅴの98人の中国人女性に対し,蓄熱式または単発式による
脱毛治療を左または右に無作為に割り付けし,4 週間ごとに 4 回施術して,最後の施術から 6
か月後に評価した.脱毛効果について蓄熱式は全体の 90.2%,単発式では 87%で統計的に有意
差はなかった.VAS を用いた痛みの評価では,蓄熱式 2.75,単発式 6.75 と統計的に有意差を
認め,従来の 820 nm ダイオードと比較しても,脱毛効果は有意差なく得られ,疼痛について
は有意差をもって蓄熱式が有用であることが示唆された.
Royo ら8)9)は,スキンタイプⅢ~Ⅴ368 人を腋,胸部,腹部,恥骨部,ビキニラインの 5 部位
のいずれかに無作為に割り当て,2 か月ごとに蓄熱式を 5 回施術し,最終施術から 6 か月後(初
回から 14 か月後)まで経過観察し,そのうち 15 人で生検した.15 人中 9 人で表皮基底層にわ
ずかに空胞変性がみられた.そのほか真皮上層と毛包周囲に浮腫と炎症性細胞浸潤を認めた.
患者の中で 82 人の日焼けをした人と,していない人の間の有害事象に差はなかった.患者満足
CQ 脱毛に蓄熱式脱毛は有効か? 5—1—4
推奨度
推奨文
90(158) 日美外報 Vol. 44 特別号
度は 5 段階評価で 3 以上をつけたものが全体の 95%であった.ほとんどの患者に施術後紅斑と
浮腫がみられたが一過性のものであった.一部色素沈着を呈した部位については,面積が小さ
いため,ハンドピースを連続的かつ均一に移動することが難しく,技術的な問題が考えられた.
同様の検証は日本人患者 25 人においても報告されている10).
近年,蓄熱式脱毛レーザーを利用して,これまで治療が困難であった色素病変と多毛を有す
る疾患の治療の有用性について報告されている11)12).Lapidoth ら11)は,2 施設においてスキンタ
イプⅣ~Ⅵの肩に生じた有毛のベッカー母斑患者 15 人に対して 8 回の施術後 6,12 か月後に評
価した.有害事象はなく,全例で施術時に麻酔を使用せず,冷却も不要だった.つまり多毛の
脱毛時に,皮膚に強い色素病変があっても痛みや副作用を生じず,有意な脱毛効果が得られた
と報告した.
蓄熱式脱毛レーザー機器はハンドピースを動かしながら施術するため,施術者の技量により
効果に差が出る可能性は否めない.また,上口唇や,眉周囲など狭い照射部位ではハンドピー
スを動かすことが十分にできないこともあり,高フルエンス,単射式脱毛と併用することもあ
る10).しかし,蓄熱式脱毛レーザー機器による治療は従来の脱毛と比較して脱毛効果に有意差
がなく,疼痛が少ないことが大きなメリットであり,スキンタイプによらず照射が可能である
ことから,脱毛を希望する患者の選択肢の 1 つと推奨できる.
文 献
1) Braun M. Comparison of high‒fluence, single‒pass diode laser to low‒fluence, multiple‒pass diode laser
for laser hair reduction with 18 months of follow up. J Drugs Dermatol, 10(1):62‒65, 2011.
2) Braun M. Permanent laser hair removal with low fluence high repetition rate versus high fluence low repetition rate 810 nm diode laser ― a split leg comparison study. J Drugs Dermatol, (11 Suppl) 8 :s14‒s17, 2009.
3) Koo B, Ball K, Tremaine AM, et al. A comparison of two 810 nm diode lasers for hair removal:low fluence, multiple pass versus a high fluence, single pass technique. Lasers Surg Med, 46(4):270‒274, 2014.
4) Paasch U, Wagner JA, Paasch HW. Novel 755‒nm diode laser vs. conventional 755‒nm scanned alexandrite laser:Side‒by‒side comparison pilot study for thorax and axillary hair removal. J Cosmet Laser
Ther, 17(4):189‒193, 2015.
5) Nistico SP, Del Duca E, Farnetani F, et al. Removal of unwanted hair:efficacy, tolerability, and safety of
long‒pulsed 755‒nm alexamdrite laser equipped with a sapphire handpiece. Lasers Med Sci, 33(7):
1479‒1483, 2018.
6) Trelles MA, Urdiales F, Al‒Zarouni M. Hair structures are effectively altered during 810 nm diode laser
hair epilation at low fluences. J Dermatolog Treat, 21(2):97‒100, 2010.
7) Li W, Liu C, Chen Z, et al. Safety and efficacy of low fluence, high repetition rate versus heigh fluence, low
repetition rate 810 nm diode laser for axillary hair removal in Chinese women. J Cosmet Ther, 18(7):
393‒396, 2016.
8) Royo J, Moreno‒Moraga J, Trelles MA. Clinical assessment of a new 755 nm diode laser for hair removal:efficacy, safety, and practicality of 56 patients. Lasers Surg Med, 49(4):355‒360, 2017.
9) Royo J, Vrdiales F, Moreno J, et al. Six‒month follow‒up multicenter prospective study of 368 patients,
phototypes Ⅲ to Ⅴ, on efficacy using an 810‒nm diode laser at low fluence. Lasers Med Sci, 26(2):247‒
255, 2011.
10) Omi T. Static and dynamic modes of 810 nm diode laser hair removal compared:a clinical and histological study. Laser Ther, 26(1):31‒37, 2017.
11) Lapidoth M, Adatto M, Cohen S, et al. Hypertrichosis in Becker’s nevus:effective low‒fluence laser hair
removal. Lasers Med Sci, 29(1):191‒193, 2014.
12) 有川公三:Ⅲ各論 ダイオードレーザー.Non‒Surgical 美容医療超実践講座.宮田成章編.162‒177,全日
本病院出版会,2017.
美容医療診療指針(令和 3 年度改訂版) 91(159)
なので、蓄熱式が効果はないという訳では決してありません。
蓄熱式のデメリットを上げるとすると、下記2点になります。
- 蓄熱式脱毛レーザー機器はハンドピースを動かしながら施術するため,施術者の技量により効果の差が出ること
- 狭い所箇所はハンドピースを動かしながら施術するため脱毛効率がよくない
VIOも狭い範囲になるので、こちらは蓄熱式より熱破壊式で脱毛する方が良いですね♪
熱破壊式と蓄熱式、わたしはどっちが合ってるの?
熱破壊式か蓄熱式か選ぶ際、あなたが女性か男性か、またどの部位を脱毛するかによって変わってきます。
下記イラストを見て頂ければ、分かりやすいのですが男性のヒゲは、太くて根深いです。
また腕などは男性・女性濃さや量は違いますが、産毛か多いです。
VIOは、色素沈着をしている方が多く太くて濃い毛です。
引用:acs赤池クリニック
以上のことから、性別・部位ごとに熱破壊式か蓄熱式のどちらがいいのか分かりやすく表にしました。
男性に最適なのは熱破壊式or蓄熱式?
男性の脱毛 | 熱破壊式か蓄熱式 どっちがおすすめ | レーザーの種類 |
---|---|---|
ヒゲ | 熱破壊式 | ヤグorアレキサンドライトレーザー |
VIO | 熱破壊式 | ヤグレーザー ダイオレーザー |
全身 (背中以外) | 蓄熱式 | ダイオレーザー |
ざっくりとですが、男性の濃いヒゲがVIOには熱破壊式が効果的です。
特にヒゲや色素が濃いVIO脱毛には、ヤグレーザーが効果を発揮します。
同じ熱破壊式のアレキサンドラライトレーザーだけでは、脱毛しきれません。
アレキサンドラライトレーザー波長が短く、黒い肌には脱毛できないためです。
女性に最適なのは熱破壊式or蓄熱式?
女性の脱毛 | 熱破壊式か蓄熱式か どっちがおすすめ? | レーザーの種類 |
---|---|---|
顔 | 熱破壊式or蓄熱式 | ヤグレーザー・ダイオレーザー |
VIO | 熱破壊式 | ヤグレーザー・ダイオレーザー |
全身 (背中以外) | 蓄熱式 | ダイオレーザー |
わたしは全身脱毛を蓄熱式のラシャで脱毛してますが、十分効果を発揮しています。
VIO脱毛もラシャで脱毛していますが、こちらは熱破破壊式に切り替えて脱毛しています。
VIO脱毛に関しては、熱破壊式がお勧めです。(濃くて根深いため)
ですが、熱破壊式のアレキサンドラライトレーザーは、VIOには不向きです。
全身でも背中は、背中の皮膚が厚くて深いので熱破壊式のアレキサンドラライトレーザーでは届かないんですね(汗)
脱毛機器を選ぶ際は、熱破壊式か蓄熱式かと同じくらい波長の長さも大事です!
医療レーザーを選ぶ際に大事なこと!
レーザーの照射方法とレーザーの波長が大事!
ヒゲとVIO脱毛におすすめな脱毛機器は何?
わたしが考える男性のヒゲとVIO脱毛は、下記の3つの方法がお勧めです!
①~③のお好みの脱毛方法が見つかりましたら、あなたが通おうと思っているクリニックにその脱毛機器があるのかご確認下さい。
- 男性に関しては、痛みに耐えられるならヤグレーザーが早く脱毛効果を感じられます。また、色素沈着のあるVIOでもやけどのリスクがなく出力を上げて照射できるのでお勧めです♪
- 痛みが苦手な方は、アレキサンドラライトレーザーである程度脱毛してから、ヤグレーザーに移行というのもおすすめ! ジェントルマックスプロなどは、アレキサンドラライトレーザーとヤグの波長を切り替えられるのでジェントルマックスプロなど波長を切り替えられる脱毛機器を選ぶのも良い選択だと思います
- ③最新脱毛機器のライトシェアクアトロは、805nmと️1060nmの2波長吸引式で痛みがなく根深い毛にも効果的なのでお近くにライトシェアクアトロがある方にはお勧めです!
女性におすすめな脱毛機器は何?
脇やVIOなどの濃い毛は熱破壊式がよいですが、それ以外の部位は余程剛毛な方以外は蓄熱式で十分だと思います。
産毛や濃い毛も得意なダイオードで、蓄熱式でも十分効果があると思います。
ただ、クリニック独自で作った脱毛機器は、データーが少なく今後もエビデンスが取りにくいのでお勧めできません。
【知恵袋より】脱毛するなら熱破壊式と蓄熱式がどっちがいいの?蓄熱式が効果ないって本当?まとめ
熱破壊式脱毛と蓄熱式脱毛との大きな違いは、アプローチする場所と照射方法です。
蓄熱式脱毛 | 熱破壊式脱毛 | |
---|---|---|
アプローチする場所 | 根の浅い位置にあるバルジ領域にアプローチ | 毛根の奥にある毛母細胞や毛乳頭にアプローチ |
照射方法 | 弱いパワーで連続して照射 | 強いパワーで単発で照射 |
レーザーの種類 | ダイオレーザー | ヤグレーザー・アレキサンドライトレーザー・ダイオレーザー |
あなたに合った脱毛機器を見つけるには、蓄熱式か熱破壊式かと波長の長さの2つが重要です!
レーザーの種類による効果の違いです。
医療レーザーを選ぶ際に大事なこと!
レーザーの照射方法とレーザーの波長が大事!
男性のヒゲやVIO脱毛には、【熱破壊式×ヤグレーザー】が効果が高いです。
女性のVIO脱毛は、【熱破壊式×ダイオレーザーorヤグレーザー】がお勧めです。
全身脱毛に関しては、【蓄熱式×ダイオレーザー】でも脱毛効果はあります!
ここまでの長文をお読み頂きありがとうございました。